変形性ひざ関節症で手術適応となる目安

変形性ひざ関節症では、まずは運動療法や薬物療法などによる保存的治療が試みられます。それで改善が見られないケースにおいて手術的治療が検討されるわけですが、適応の目安としては、次のような判断ポイントがあげられます。

治療期間や症状で判断する手術適応

保存的治療を6ヵ月続けてもひざの痛みが改善されないことが、手術適応のひとつの目安と言えます。

保存的治療を6ヵ月続けてもひざの痛みが改善されないことが、手術適応のひとつの目安になります。また、ひざの痛みが日常生活に支障を来すADL障害が重度であることも、検討ポイント。軟骨のすり減りがかなり進行していて、骨自体が損傷している重度な病態であると考えられます。
その場合、保存的治療では、改善効果が見込めないばかりか、変形性ひざ関節症の進行を抑えることもままならないからです。

レントゲン検査から判断する手術適応

変形性ひざ関節症には、レントゲン写真に見る進行度合いを4段階のグレードに分けた、K-L分類(Kellgren-Lawrence)という診断基準があります。この基準を軸にした場合、グレード3以上は手術的治療の適応となることが多いでしょう。ただし、症状やMRIでより詳細に検査した結果によっては、K-L分類でグレード2でも、手術を検討した方が良いという判断になることもあります。

Kellgren-Lawrence分類(K-L分類)

Grade 1

変形性ひざ関節症の予備軍となるひざ。
関節の隙間に狭まりはないが、わずかに骨棘※1の形成、もしくは軟骨下の骨硬化※2が見られる。

Grade 1

Grade 2

変形性ひざ関節症の初期のひざ。
関節の隙間の狭まり(25%以下)と微小な骨棘の形成が確認できるが、骨の変形はまだ見られない。

Grade 2

Grade 3

変形性ひざ関節症の中期のひざ。
関節の隙間が50〜70%狭小し、骨棘形成が認められる。また、骨硬化も確認できる。

Grade 3

Grade 4

変形性ひざ関節症の後期のひざ。
関節の隙間を75%以上失い、完全になくなった箇所も見られる。大きな骨棘など、骨の変形が著しい状態。

Grade 4

出典:「RADIOLOGICAL ASSESSMENT OF OSTEO-ARTHROSIS」(J. H. KELLGREN / J. S. LAWRENCE)
※1 骨棘:こつきょく。骨の縁にトゲのような変形が生じること。
※2 骨硬化:骨同士がぶつかり合い、硬くなっている状態。X線画像ではより白く映る。

変形性ひざ関節症の3つの手術を比較

変形性ひざ関節症の手術療法は、大きく3つ。「関節鏡視下手術(デブリドマン手術)」「高位脛骨骨切り術(HTO手術)」「人工関節置換術」です。これらがどう違うのか、適応や入院期間、費用などを比較したものが、下記になります。

関節鏡視下手術 高位脛骨骨切り術 人工関節置換術
適応 初期 中期 末期
体の負担 ★★ ★★★★ ★★★★★
メリット 傷が小さい
低負担
活動的な生活可 痛みの解消
歩行可能
デメリット 再発リスク 長期リハビリ 約20年で交換
体への負担大
入院期間 1週間ほど 3週間ほど 2週間〜数カ月
手術費用 3割:5万円
1割:2万円
3割:10〜12万円
1割:3〜4万円
3割:24万円
1割:8万円
※材料費や麻酔代に幅があるため、手術費用は概算です。また、入院費は含まれていません。

関節鏡視下手術(デブリドマン手術)

関節鏡視下手術(デブリドマン手術): ひざに2、3カ所つくった6mmほどの小さな切開口から内視鏡(カメラが搭載された細い棒状の器具)を挿入し、関節内をモニターで見ながら行う手術です。

ひざに2、3カ所つくった6mmほどの小さな切開口から内視鏡(カメラが搭載された細い棒状の器具)を挿入し、関節内をモニターで見ながら行う手術です。目的は痛んだ組織の切除で、例えば、けば立った軟骨や半月板の損傷部など。これらの処置で改善が期待できる、変形性ひざ関節症のなかでも軽度の病態が適応となります。
対症療法であるため再発する可能性はありますが、大きな切開はない手術。早ければ2、3日で退院ということも珍しくなく、高位脛骨骨切り術や人工関節置換術を行うかの判断材料となる、軟骨評価のために行うケースも見られます。

高位脛骨骨切り術(HTO手術)

関節鏡視下手術が適応外のとき、次に検討されるのが高位脛骨骨切り術(HTO手術)です。脛骨(けいこつ:すねの骨)の傾きを金属プレートで固定して矯正する方法で、O脚やX脚によるひざ関節内のダメージ拡大を防ぎます。
関節を温存することができひざの可動域に制限が出ない、入れ替えの必要がないなどといった人工関節置換術との違いから、40代の若さでも受けることが可能。ただし、ひざ関節の内側と外側、どちらかが正常に保たれているケースに限られます(両方ともが損傷しているケースは適応外)。また、関節を温存できる反面、骨の癒合に少し時間がかかります。松葉杖で歩けるようになるまでに1〜2週間、入院も3週間ほど。退院後もリハビリを続ける必要があります。

オープン・ウェッジ法
O脚の場合、脛骨の内側を切り開き、人工骨を入れて金属プレートで固定する方法。X脚の場合は脛骨の外側を切開します。
脛骨を切開 / 開いた部分に人工骨を入れる 金属で固定
クローズド・ウェッジ法
ひざ関節の外側の脛骨から腓骨(脛骨に並ぶ細い骨)をくさび状に切除してつなぎ合わせ、金属で固定する方法。つまり、骨を短縮さて傾きを調整します。
脛骨と腓骨の一部を切除 / 切り取った部分を合わせてプレートで固定

人工関節置換術

損傷した骨を削り形を整え、人工的につくられたひざ関節をはめ込む治療法が、人工関節置換術です。大腿骨(だいたいこつ:太ももの骨)と脛骨の表面を部分的に人工関節にする手術と、全体的にインプラントに置き換えるという2種類の方法があります。他の手術と異なるのは、ひざ関節の問題を根本から取り除けるという点。そのため、痛みの大幅な解消を望むことができます。
懸念点は、インプラントの入れ替えを行う再置換の手術。人体への影響が少ないとされる、チタン合金やポリエチレンを素材とする人工関節ですが、耐久年数の問題から、15〜20年ほどでの入れ替え手術が必要です。そのため、手術の主な適応は60歳以上。ただし、全身麻酔をつかった1〜2時間の手術なので、高齢すぎてもリスクが伴います。また、感染症にも注意が必要です。

人工ひざ単顆置換術(UKA)
ひざ関節の内側だけ、もしくは外側だけなど、損傷が激しい部分だけを人工関節に置き換える方法。入院期間は2週間と人工関節全置換術に比べて短い一方、インプラントと本来の骨とのバランス調整が難しい手術です。
ひざ関節の内側だけ、もしくは外側だけなど、損傷が激しい部分だけを人工関節に置き換える方法
人工ひざ関節全置換術(TKA)
ひざ関節全体を人工関節に置き換える手術ということで、体への負担は大きめです。違和感を覚えることも。ただ、高い改善効果が見込めます。入院期間は1〜2ヵ月。
ひざ関節全体を人工関節に置き換える手術

手術とは異なる、変形性ひざ関節症の治療

変形性ひざ関節症の一般的な治療では、保存療法で改善されなければ手術療法という、言わば極端な選択を迫られます。しかし手術には、入院や完全に回復するまでの生活への支障など、大きなデメリットが。その影響を心配して、なかなか手術に踏み切れない患者さまも少なくはないでしょう。
そんな方へのために、当院ではひざを切らない先進的な治療法をご案内しています。再生医療を中心に、すべて入院の必要がなく日帰りで受けられる治療法です。